HOME

2010年8月7日

設立1周年記念集会での金子先生の記念講演《要旨》を掲載しました

Filed under: お知らせ,スタッフBlog — 事務局 @ 5:18 PM

《大阪希望館設立1周年記念集会記念講演要旨》

社会を変革する希望の力

天理大学おやさと研究所教授 金子昭さん 

1.宗教者の「目線の高さ」とは

金子昭先生 宗教者が「大阪希望館」のような支援活動に関わる姿勢について、あるマスコミ関係者の方から「宗教者の目線は高い」と言われたことがあります。私自身は「中途半端な高さの目線」になっているのではないかと思っています。むしろ自分自身を見直せるくらい「もっと高い位置から俯瞰」することが、「徹底した低い地点」の見方にも通じるのではないでしょうか。

 私は高校時代に不登校になり、私立高校から公立高校・夜間高校と高校1年生を3回経験しました。夜間高校に通学していたとき、どんな現実にも二重三重の意味があることに気付きました。「不登校」も「学校恐怖症」「登校拒否」と名前を変え、時代と共に価値観が動いていると実感します。自暴自棄にならなかったのは、心のどこかにに「希望」の2文字があったからだと思います。

 社会変革などの運動にかかわる「立場制(ポジショナリティー)」について、本田哲郎神父は「相手の立場に立つしかない。そこから出発しないと正しい人間関係が出来ないのではないか」と仰っています。他者とかかわることによって自分を確認し、自分の立場を超え、より大きな立場で「つながっていく」ことができるのです。 

 最近の政治家には「対立の図式」を描き、そこに「目に見える敵」を作り出し、その敵をたたくことによって勝ち組になろうとする人が多いように見受けられます。背景にヒーロー待望論があるように思いますが、社会は「対立の図式」から「複雑系」として捉えていく必要があるのではないでしょうか。

2.民衆宗教と「世直し」の力

 民衆宗教と「世直し」の力についてお話します。「民衆」と同じような言葉として「大衆」がありますが意味は異なります。「民衆の力」は希望であり、そこに「(民衆)宗教」があります。その昔、人々はお上に頼らず、自分たちの力で世直しをすべく立ち上がりました。下からせりあがって世直しをした。社会の谷底からせり上がっていくのが希望の力であり、民衆の力であり、それが民衆宗教です。

 大塩平八郎は弱者救済の世直しに立ちあがりました。中山みきは引きこもり後、救済を開始しました。赤沢文治は金光教を開きました。「世直し・改革」は「外側からの改革」か「内側からの改革」か、で分かれます。「外側からの改革」は権力に対して暴力をぶつける「上から目線」の改革であり、「内側からの改革」は権力を内側から変革するものです。「内側からの改革」は静かな共鳴と反響を及ぼしていく民衆宗教が目指す改革であるといえます。中山みきは引きこもり、自分を深く見つめ直し、空高く俯瞰するところから世直しの改革を説きました。「世直し」と「心直し」、社会変革と自己変革をワンセットとして、痛みをばねに、自分を問い返し、「痛みのない社会づくり」にとりくもうとしたのです。

 3.社会を変革する“希望の力”

 人間とは「希望する人homo esperans」(エーリッヒ・フロム)だと言われます。希望と期待は異なります。期待は受身です。希望は自分に対して持ち、能動的に働くものです。自分で自分を疎外したときマイナスの力が働き破壊性を持ちます。マイナスのエネルギーを反転すれば社会変革と結びつけたエネルギーを持つことができ、「深く傷ついた」体験を「希望をより深められた」体験に転化にできます。ここに人間の回復力の強さがあります。

 4.希望としての労働

 「働くというのは、はたはたのものを楽にするから、はたらく」(「稿本教祖伝逸話篇」より)と言われます。しかし。最近では、巨大ネット書店の出現で町の小さな本屋さんは次々つぶれ、一方こうした巨大ネット書店での労働は「1分間に3冊さがす」といわれているが、そのような中で行われている「労働」とはいかなるものか。私は注文して2週間かかっても天理市内の小さな書店に書籍の注文を行うこととしています。「働く」という意味を自らが組み替え、組み直していくことが公正で正義の社会構築につながると思います。

 5.誰もが皆が自分の「人生の勝ち組」に

私は、社会変革のアクションに参加することを宗教者に訴えたいと思っています。「つぶれるものはつぶれても良い」というような、権力の存在や社会の同調圧力に対して無自覚・無抵抗であってはなりません。自己の経営的確立と同時に社会のすべての人にこれを促す。結果として誰もが「人生の勝ち組」になれるような世界を作っていく。そのための自己改革と社会変革こそが必要とされていると思うからです。

《この講演要旨の文責は大阪希望館運営協議会事務局です》

大阪希望館設立1周年記念集会を開催(7/31)

Filed under: お知らせ,スタッフBlog — 事務局 @ 5:06 PM

客席1

「大阪希望館」運営協議会は、7月31日(土)午後2時から北区・「大淀コミュニティセンター」において「大阪希望館設立1周年記念集会」を開催し、227人が参加しました。

合田清さん 集会のオープニングは「さすらいのピアノマン」こと合田清さんと自立支援センター職員としてホームレスの就労支援に取り組む傍ら音楽活動も行っている竹内俊浩さんによるミニコンサート。お二人ジョイントによる「レット・イット・ビー」などポップスの演奏の後、合田さんによる「エリーゼのために」などクラシック・ピアノ曲の独奏。最後に演奏されたのは合田さん作曲による「The Water of Blue」。素晴らしい演奏に会場は盛り上がりました。なお、この曲は先ごろリリースされた合田さんのCD「祈り」にも収録されています。

  山田共同代表続いて、山田保夫・運営協議会共同代表が挨拶に立ち、「正規・非正規を問わず働く者の支え合いが一番大切です。私は大阪希望館の取り組みを通じてこの1年、『支え合う』ということを自問自答してきたように感じます。人を支えるというのは大変だけど、そこに支えてもらってもいるという安堵感もあるのが『支え合う』という関係だと気付きました。何事にしろ2年目は1年目には経験しなかった困難に出会う可能性もありますが、その困難ももう一度『支え合う』ことを考えるきっかけとして発展していきたいと思います。参加者の皆さまの引き続くご支援をお願いします」と2年目の決意と支援のお願いを訴えました。

沖野事務局長 次に沖野充彦・運営協議会事務局長が1年間の活動紹介とともに「希望館を巣立った人たちも決して楽な生活が待っているわけではなく、様々な困難に直面しながら頑張っています。希望館はそんな苦労を共有し合い一緒に考えていくことのできる場になっていかなくてはなりません。そのためには地域に関わっていくことが重要です。今年の6月から希望館・大淀寮・大阪市立大学が協働して『おおよど縁パワーネット」という事業を立ち上げました。希望館の利用者と巣立った人たちの支え合いのネットワークを『おおよど』という地域にも生かし、その一方で地域の利用者の皆さん中に彼らの活動と働く場づくりを展望していく、そんな取り組みにも力を注いでいきたいと思っています」と2年目の抱負を語りました。また、利用者とOBを代表して3人の人が希望館との出会い、今の生活と目標について語ると、会場から大きな拍手が湧き上がりました。

 最後に天理大学おやさと研究所教授の金子昭先生による記念講演を受けました(講演要旨については別項目をご参照ください)。

 猛暑の中の集会となりましたが、ご参加いただきました皆さん、本当にありがとうございました。

 なお、当日の会場設営及び撤収につきましては大阪希望館利用者およびOBの皆さんがボランティアで担ってくださいました。ご紹介しお礼申し上げます。ありがとうございました。